見て、拾って、この道で。

kusa
人が見残してゆくところに、
本当に大切なものが、
静かに置き去りになっているということ。

 

それは国道を急ぐ車のナビの中でなく
道路わきの側溝に詰まって朽ちた落ち葉の層の間に

それは正月のおみくじ箱の中でなく
鳥居の横の小さな水たまりに潜む空とともに

それはあまたの発信屋たちによる文字記号の羅列の中でなく
朝の駅のキヨスク店員の目もとの笑いジワの語りに

それは客席から歓声を沸かせる輝かしい舞台の中でなく
裏の小道で聴いた間違いだらけの「きよしこの夜」の縦笛の音に

それはあらゆる電波通信の中でなく
十何年と開かれない部屋の扉の向こう、
古き友が抱き続ける、沈黙の叫びと流れぬ涙のその奥に。

静かにある。

 

その声だからこそ届く先に、流せる誰かの涙があって
あの手だからこそ触れられる先に、浮かぶ誰かの笑顔がある。
誰もがひとりひとり、あなただからこそというものが、
ほんの身近に、愕くほどたくさんある。

あなたでなければならない。

 

人が見残したものを見る。
目にしたそれが、その者の道を作ってゆく。

置き去りの美しさを拾い集める。
そんな道もある。

2016-12-06 | Posted in ブログ, 日毎フォトNo Comments » 

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